憲法

【書評】「比較のなかの改憲論-日本国憲法の位置」(辻村みよ子)。日本国憲法の現代的意味を再検討する一冊

参議院選挙が終わり、マスコミは「改憲勢力が2/3を超えた」と盛んに言っています。

私は憲法改正に反対ではありません。より良い憲法になるのなら改正してもいいと思っています。

しかし、自民党や日本維新の会が主張する憲法「改正」には反対です。

なぜなら、天皇を元首にしたり、基本的人権を後退させる内容だからです。

安倍さんが首相になってにわかに憲法改正が議論されるようになりました。

この流れは段々と強くなっています。

本当に憲法改正が必要なのでしょうか。本書は比較憲法について研究している東北大学の辻村みよ子さんが世界の憲法と比較しながら日本国憲法の位置づけを改めて考え直しています。

メディアの疑問を整理し、答えることを念頭に

著者の辻村みよ子さんは「比較憲法」の専門家ということで、多くの取材依頼を受けました。

そのほとんどは「外国の憲法」との比較に関わる問題だったそうです。

まあ、比較憲法の「専門家」ですから、外国の憲法と比較して日本国憲法はどうなっているか、という質問が多いのは納得です。

著者は大きく分類して7つの論点に絞りました。

日本国憲法の「改正」ハードルは高すぎる?

日本国憲法を改正するには国会の両議院の2/3以上の議員が賛成して発議し、国民投票で過半数の賛成を得なければなりません。

憲法96条に規定されていますが、この規定が改正ハードルを高めている。そこで、憲法96条の改正をしようじゃないかという議論が起こりました。

いわゆる憲法96条先行改正論です。

これには多くの憲法研究者をはじめとして評判が良くなく挫折しました。

本当に改正ハードルは高いのでしょうか?

世界では日本のような規定を持っている国は少なくなく、むしろ国民投票法が改正ハードルを下げています。

それは、国民投票法が投票数の過半数を超えれば良いとの規定になっているからです。

極端な話、投票率が20%でそのうちの過半数が賛成したら憲法は改正できるのです。

世界では、国民の過半数が投票しないと無効になると規定をする国もありますから、決してハードルは高くありません。

また、議員の2/3という規定も、憲法という国の基本的な法律を改正するのだから国会議員が熟議に熟議を重ねる必要があるということを憲法が要請しているのです。

改正の限界ってないの?

日本国憲法は国民主権と基本的人権の尊重、平和主義が採られています。

憲法を改正するにあたって、何でもかんでも改正できるのでしょうか?

例えば、国民主権を採用するのではなくて、明治憲法のような天皇主権に戻すことは可能か。

自民党の改憲草案では、天皇を元首にすることが書かれています。

現在、天皇は形式的・儀礼的な公務を内閣の助言と承認によって行うとされています。

それを元首にするというのですから大転換です。

また基本的人権について自民党改憲草案は、一定の制約のもとに認められるとする内容です。

基本的人権の大幅な後退を改正によって行うことができるのか。

世界的に見れば、このような改正はできないとする憲法が圧倒的多数です。

日本国内でも憲法研究者の多くは、改正によっても変えられないことがあると言っています。

最後に

憲法改正論議のスピードが早まって数年以内に発議、国民投票ということも現実に起こるかもしれません。

私は自民党の改正論議には反対ですし、日本維新の会のそれも然りです。

今必要なのは改正論議ではなく、憲法をくらしの隅々にまで行き渡らせることだと考えます。

そのために日本国憲法の立ち位置をしっかりと学び、後世に伝えることが大事です。

本書はそのための議論の素材を提供しているようにも読めます。

ABOUT ME
たくお
主夫です(専業ではありません)。 ユニコーンとスピッツ、らーめんが好きです。チーズが食べられません。 文具にも興味があります。